デノミという言葉を聞いたことありますか?
デノミとは、デノミネーションを略した言葉です。もし急に、日本でもデノミネーションが実施されることになるとすれば、それほど怖ろしいことはありません。
それはなんでなのかを、世界各国で行われてきたデノミの歴史と共にお伝えします。
デノミネーション(略してデノミ)とは、通貨の呼称単位を切り下げること、通貨単位を変更することを意味します。その説明だけではピンとこないかもしれません。なので、もっと分かりやすく簡単に言えば、通貨の呼称単位を切り下げるということは、その国の通貨の貨幣価値を下げるということです。
たとえば、日本の通貨である円を例に挙げて、考えてみれば分かりやすいでしょう。もし仮に、1,000分の1のデノミが今日実施されたとすれば、昨日までの1,000円が今日からは1円になるということです。つまり、我々の持っているお金の価値が、いきなり1,000分の1になってしまうのです。
仮に1億円の貯金を持っていたとしても、1000分の1のデノミが実施されれば、わずか10万円までの貨幣価値に下がってしまうのです。なので、こんなに怖ろしいことはありません。でも、どうしてそんなに怖ろしいデノミが過去に世界で行われてきたのでしょう?
その理由は、インフレと呼ばれているインフレーションが行き過ぎたからです。インフレとは、物の価値が上がって、お金の価値が下がる事です。ちなみにこのデノミが実施された場合は、その国の資産だけではなく、負債も同様に扱われることになります。
つまり、通貨の貨幣価値が下がるわけですから、国の借金(負債)も貨幣価値が下がる分だけ、大幅に減らすことができるのです。
このデノミは、インフレにより物価の価値が上がり過ぎてハイパーインフレになった場合に、過去に実施されてきた歴史があります。
過去には、第一次世界大戦後の1923年に、ドイツでハイパーインフレが起きた時には、物を買うために荷車でお金(紙幣)を運ぶような状態にまでなってしまったそうでした。そんな事態を収束するために、デノミで貨幣価値を下げるしか方法がなくなってしまったのです。
このデノミは、レンテンマルクの奇跡ということで歴史に残る出来事になりましたが、なんと1兆分の1というデノミが実施されたのです。
他の国でも、、、1993年3月1日、ウルグアイはウルグアイ・ペソを発行し、1,000分の1のデノミを行いました。1994年1月1日のユーゴスラビア・ディナールは10億分の1のデノミを行いました。ちなみにユーゴスラビアでは、この時のデノミが、1990年以降5回目のデノミとなりました。
2005年1月1日、トルコは新トルコリラを発行し、事実上の100万分の1のデノミを行い、2,000万トルコリラ紙幣(当時は約1,500円に相当)は20新トルコ・リラになりました。2005年7月1日、ルーマニアは1万分の1のデノミを行い、旧10,000レイ は新1レウになりました。
2008年8月1日、ジンバブエは100億分の1のデノミを行い、100億ジンバブエ・ドル(当時は約2円に相当)は1新ジンバブエ・ドルになりました。2009年2月2日、更にジンバブエは1兆分の1のデノミを行いましたが、ほぼ半年の間にデノミを再度実施する異例の事態となりました。
2009年11月30日、北朝鮮は同国通貨ウォンの100分の1のデノミを行いました。この時のデノミには、一世帯あたり10万ウォン(非公式レートで約3,000円)の上限額が設けられ、それを超える現金は事実上北朝鮮政府に没収されてしまうということで大混乱を招きました。
そんなふうに歴史を遡ってみれば、ハイパーインフレが行き過ぎてしまい、デノミを実施せざるを得なかった歴史は少なくありません。
そして我々の日本でも、昭和2年と昭和21年にデノミが実施をされた歴史があります。その当時のデノミでは、新通貨との交換比率は1対1であったそうですが、デノミを行う前に国民の預金は政府によって封鎖をされたということです。
そして、その後に新通貨との交換期間は2週間以内という期限を設けられて、交換額には上限が設けられたそうです。交換額の上限を超えた国民のお金はそのまま預金として据え置かれたそうですが、最大90%の財産税が政府により課せられたということです。
ちなみに2009年9月の民主党政権発足以降の鳩山由紀夫内閣の時には、実際に日本でもデノミが検討されていたという報道は、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか? デノミの最大の効果は、諸外国には大きな迷惑を掛けることなく国の赤字を減らすことが出来ることです。
なぜなら、貨幣価値の切り下げにより負債額を大幅に減らすことができるからです。でも、その反面で、我々国民からすれば、これまでに一生懸命に築いてきた財産価値が大きく減らされてしまうことになるわけなので、とても大迷惑で怖ろしい話です。
結局は、当時の藤井裕久財務大臣が辞任したことで、鳩山由紀夫内閣でのデノミの実施計画は頓挫しました。でも、政治家が国民を犠牲にして国家の財政を立て直そうとすることが検討されていたと考えるだけでも、本当にとても怖ろしいことです。
やはり万が一の不測の事態に備えて、どんな状況でもしっかりとお金を生み出すことができる能力を身に付けておくことは、今の時代を生き抜いていくためには欠かせない最優先事項であることに間違いはないでしょう。
さて、我々のように相場に参加している投資家という立場からすれば、各国の金利政策はとても重要です。なぜなら、インフレになれば政策金利は上がり、デフレになれば政策金利は下がるからです。
インフレになるという事は、物価が上昇傾向にあるという事。その状況は世の中の景気が良い状況にあるということです。なぜなら、物やサービスの需要が旺盛だからこそ、物価を下げる必要がないからです。物価が上がるとは、それは裏を返せば貨幣の価値が下がるという事です。
そういう状態とは反対に、デフレになるという事は、物価が下落傾向にあるという事で、その状況は世の中の景気が良くない状況にあるということです。なぜなら、物やサービスの需要が少ないからこそ、物価を下げざるを得ないからです。物価が下がるとは、それは裏を返せば貨幣の価値が上がるという事です。
バブル経済崩壊後の日本は、ずっとデフレ状態にありました。物価が下がり続けて、その結果、労働賃金の上昇はずっと抑えられたままでした。つまり、失われた30年という言葉が示すように、日本は経済的には成長できない状態が長く続いてしまいました。
なので、デフレ状態が続いていたので超低金利政策を続けていたのです。そして、他国との金利差も相まって、円安相場がかなり進むことになりました。基本的に為替相場は、金利が高い通貨が買われて、金利が安い通貨が売られる傾向にあります。
ですから、取引する通貨の政策金利の動向には、為替相場参加者である以上は常に注意を払う必要があります。この記事の内容が参考になれば幸いです。