
AI(人工知能)で為替相場の予想は可能なのでしょうか?
2023年に生成AIのChatGPTが世界中で話題になりました。それから、いくつもの生成AIサービスが、多くの人たちに利用されるようになりました。実際に生成AIは使ってみると便利なのは確かです。でも、為替相場の予想は可能なのでしょうか? そのことについて、僕なりの意見を申し上げていきましょう。

- Googleで「為替相場 AI予測」と入力して検索してみると?
- アルゴリズムトレードが相場の値動きに大きな影響を与えている
- アルゴリズムトレードにAI(人工知能)を組み合わせた事例
- AI(人工知能)が大量の情報を読む事例
- AI(人工知能)は市場の変化に合わせて調整できる?
- AI(人工知能)がすべてを勝手に売買しているわけではない
- アルゴリズムトレードはさらに進化している
- 機械的な判断が信頼できない理由
- 統計的なデータや判断のみでは儲けられない理由
- 為替相場に変化を生じさせるのは機械的判断だけではない理由
- 将来的にAI(人工知能)は聖杯になり得るのか?
- トレーダーはどのような状態を狙って利益を上げているのか?
- 為替相場を動かす不変の法則
Googleで「為替相場 AI予測」と入力して検索してみると?
AI(人工知能)で為替相場の予想は可能なのでしょうか?
そのことを考える前に、実際にはもう為替相場の予想などにも使われているという事実があります。Googleの検索エンジンで「為替相場 AI予測」と入力して検索。そうすると、AI外貨予測アラートとか、FX-AIとか、いくつかのAIを使ったサービスが検索結果に表示されます。
アルゴリズムトレードが相場の値動きに大きな影響を与えている
現在の金融市場では、人間だけが売買しているわけではありません。銀行、証券会社、ヘッジファンドなどの多くの市場参加者が、コンピューターによる自動売買を利用しています。このように、あらかじめ決められたルールに従ってコンピューターが自動的に売買する仕組みを、アルゴリズムトレードと呼びます。
たとえば、「価格がある水準を上回ったら買う」「移動平均線が一定の条件になったら売る」「大きな注文を細かく分けて少しずつ売買する」といったようなルールを、コンピューターに設定しておけば、人間がそのたびに判断しなくても、自動的に注文を出すことができます。
人間よりもはるかに速く売買できる
コンピューターによる売買の大きな特徴は、判断と注文のスピードが非常に速いことです。人間であれば、「価格が動いた」「条件を確認しよう」「注文を出そう」と考えている間に時間がかかります。しかしながら、コンピューターであれば、決められた条件になった瞬間に注文を出すことができます。
そのため、ある価格に到達した瞬間に、大量の買い注文や売り注文が一気に出ることがあります。こうした注文が集中すれば、価格は短い時間で大きく動くことがあります。
同じ価格を多くのシステムが見ていることがある
アルゴリズムトレードでは、過去の高値や安値、移動平均線、節目となる価格、値動きの強さなど、さまざまな情報が売買判断に使われます。たとえば、多くの自動売買システムが、「この高値を超えたら買う」という条件を持っていたとしましょう。
そのような場合には、価格がその高値を超えた瞬間に、複数のシステムから同時に買い注文が入れば、価格が急に上昇することがあります。反対に、「この安値を下回ったら売る」という条件が多く設定されていれば、安値を割った瞬間に売り注文が増え、下落が速くなることもあります。
つまり、チャート上の重要な価格では、人間の判断だけでなく、コンピューターの売買も同時に動いている可能性があるのです。
値動きが急に速くなる理由の一つ
相場を見ていると、それまでゆっくり動いていた価格が、ある瞬間から急激に上昇したり下落したりすることがあります。その原因は一つではありません。経済指標、ニュース、大口投資家の注文など、さまざまな理由があります。その中の一つが、アルゴリズムトレードです。
ある条件を満たしたことで、多数の自動売買システムが一斉に反応すると、買いが買いを呼んだり、売りが売りを呼んだりするような状態になることがあります。その結果、値動きが一気に加速することがあります。
だからといって、相場のすべてをコンピューターが動かしているわけではない
しかしながら、すべてが機会により動かされているわけではありません。これは重要なポイントです。現在の市場でアルゴリズムトレードが大きな影響を与えているからといって、「相場はすべてコンピューターが動かしている」という意味ではありません。
相場参加者には、個人投資家、銀行、証券会社、機関投資家、ヘッジファンド、企業、中央銀行など、多くの参加者がいます。そして、それぞれが違った理由で売買しています。アルゴリズムトレードも、その中の大きな一部分だと考えるのが正しいと言えるでしょう。
チャートを見るうえで大切なこと
アルゴリズムトレードが増えた現在でも、価格は買い手と売り手の注文によって動いています。そして、その結果はすべてチャートの値動きとして残ります。人間が注文したのか、コンピューターが注文したのかに関係なく、「どこで買いが強くなったのか」「どこで売りが強くなったのか」「どこで価格が止められたのか」
そのような結果は、すべてチャートに表れてきます。だからこそ、現在の相場でも、過去の高値・安値やトレンド、チャートパターンなどを観察する意味があります。アルゴリズムトレードが相場に大きな影響を与える時代になっても、最終的な売買の結果は価格としてチャートに刻まれる。
この点を理解しておくことが、現代の相場を読み解くうえで大切です。

アルゴリズムトレードにAI(人工知能)を組み合わせた事例
アルゴリズムトレードは、「あらかじめ決めたルールに従って、コンピューターが自動で売買する仕組み」です。このアルゴリズムトレードに、現在ではAIが組み合わされてきました。一方、AIを組み合わせると、過去や現在の大量のデータを分析しながら、より良い方法をコンピューター自身が探すことができるようになります。
つまり、以下のような違いがあります。
普通のアルゴリズムトレード → 人間が決めたルールを機械が実行する
AIを使ったアルゴリズムトレード → AIがデータを分析しながら、売買や注文方法をより良く調整する
実際にAIを組み合わせたアルゴリズムトレードの実例を以下に示しましょう。
J.P.モルガンの「LOXM」
有名な事例の一つが、大手金融機関J.P.モルガンのLOXM(ロックスム)です。LOXMでは、AIの一種である強化学習という技術が使われています。強化学習とは、簡単に言えば、「やってみる → 結果を見る → より良いやり方を覚える」という学習方法です。
たとえば、大きな株式注文を一度に出すと、自分の注文によって価格が動いてしまうことがあります。そこで、「いつ注文するのか」「どの価格に注文を置くのか」「どのくらいの量を注文するのか」といったことをAIが考えながら、注文を小分けにして実行します。
J.P.モルガンの資料によれば、LOXMが機械学習の一種である強化学習を使い、注文の出し方を時間とともに最適化していく仕組みだと説明されています。 これは、AIが未来の価格を完全に予言するというものではありません。むしろ、「この注文を、できるだけ不利にならないようにどう出すか」をAIが考える仕組みだと言えるでしょう。
ブラックロックでもAIを取引に活用
世界最大級の資産運用会社であるブラックロックでも、AIや機械学習が取引に使われています。
ブラックロックは、機械学習を使って、「過去の取引との似た点を探す」「市場にどれくらい注文があるかを分析する」「大きな注文を出したときに価格へどのくらい影響するかを考える」「どの証券会社を使うか」「どのアルゴリズムで注文するか」といった判断を助けていると説明しています。
つまりAIは、「買うか売るか」だけではなく、「どうやって売買するか」という部分にも使われているのです。
AI(人工知能)が大量の情報を読む事例
AIの強みは、人間では短時間に処理できないほど大量の情報を分析できることです。たとえば、経済ニュース、企業の決算発表、市場データ、過去の値動き、取引量などをAIに分析させることができます。
J.P.モルガン・アセット・マネジメントでは、機械学習や自然言語処理を使って大量の文書を分析し、投資判断に役立てる仕組みを利用していると説明しています。 自然言語処理とは、人間が書いた文章をコンピューターに読ませ、その意味を分析させる技術です。
たとえば何万件ものニュースをAIが読み、景気に良い内容が増えているとか、企業に悪いニュースが増えているといった変化を探すことができます。そして、その分析結果をアルゴリズムトレードの判断材料として使うこともできるのです。
AI(人工知能)は市場の変化に合わせて調整できる?
従来の自動売買は、「条件Aなら買う」「条件Bなら売る」といった固定されたルールが中心でした。しかしAIを使えば、「今の市場では、どの方法がより合っているのか」を大量のデータから考えることができます。
たとえば、値動きが小さいときには注文をゆっくり出し、値動きが急に大きくなったら注文方法を変えるといった調整ができます。J.P.モルガンでは、リアルタイムの市場データや統計モデルを利用して、市場環境に合わせて動きを調整するアルゴリズムも提供しています。
AI(人工知能)がすべてを勝手に売買しているわけではない
ただし、誤解してほしくない事実があります。
AIを使ったアルゴリズムトレードというと、「AIが勝手に相場を予測して、全部自動で儲けている」というイメージを持つかもしれません。しかし実際には、もっと幅広い使われ方をしているのです。
AIは、「情報を分析する」「売買の候補を探す」「注文方法を決める」「市場の状態に合わせて注文を調整する」「取引コストを減らす」といった役割を担います。そのうえで、人間が決めたルールやリスク管理の範囲内で、自動的に取引が行われるのです。

アルゴリズムトレードはさらに進化している
昔のアルゴリズムトレードは、人間がルールを決め、コンピューターがその通りに動くという仕組みが中心でした。しかし現在では、人間が基本的な目的やルールを決め、AIが大量のデータを分析しながら、より良い取引方法を探すという形へ進化しています。
すなわち、アルゴリズムトレードにAIを組み合わせることで、単に自動で売買するだけではなく、市場の状態を分析し、注文方法や売買判断をより細かく調整できるようになっているということです。
そして、こうした仕組みを銀行、証券会社、資産運用会社などの大きな市場参加者が使っている以上、現在の相場の値動きを考えるうえで、AIとアルゴリズムトレードの存在は無視できないものになっていると言えるでしょう。
機械的な判断が信頼できない理由
でも、大切なことを忘れてはなりません。それは、値動きを生じさせているのは機械ではなく、人間の心理だということです。たとえば、デーブ・ランドリーは著書「裁量トレーダーの心得 スイングトレード編」の中で、こう述べていました。
相場は純粋に統計的な動きをしない。もしそうした動きをするならば、世界は統計の専門家が支配することになっているだろう。
統計的なデータや判断のみでは儲けられない理由
統計的なデータでは相場を支配できない。それが事実です。すなわち、機械的な判断だけで儲けることはできない。それが相場という世界です。どのような値動きを示す相場にもすべて通用する。そんな魔法のようなインジケーターもないし、トレード手法やロジックも存在しない。
もし、そういう「聖杯」のようなものがあるなら? その聖杯が発見された瞬間に相場が存在する必要が消滅します。その理由は簡単です。需要と供給のバランスを保つために相場は存在しているからです。
為替相場に変化を生じさせるのは機械的判断だけではない理由
値動きを生み出すのは機械的なデータではありません。人間の感情が値動きを生み出しているのです。そのことは、日常生活を考えたほうが理解しやすいのかもしれません。たとえば、コロナパンデミックの時はどうだったでしょうか?
マスクが品不足になり高騰して問題になりました。 品不足になった。高騰した。そのような事実が人間の感情に作用するのです。そのことで更に買いにくくなったり、値段が上がったりするのです。それは、我々が常に挑んでいる為替相場でも同じことです。

将来的にAI(人工知能)は聖杯になり得るのか?
いわゆる「聖杯」を見つけたような気がしても? それはたまたまその時の値動きに対して順調に機能しただけに過ぎません。世界で初めての相場は、18世紀に大阪で生まれた「堂島米市場」だと言われています。その頃から、数え切れないほどの人たちが、ありとあらゆる相場に関わってきました。
そして21世紀になりITの発達した現代では、コンピューターの発展によりAIによるさまざまな分析まで行えるようになりました。ですが、それでも100%の確率で値動きをピタリと予想するトレードを実現して継続していくのは至難の業です。
なぜなら、相場を支配しているのはデータ的な情報ではなく人の心理だからです。その事実は、世の中がどう発展しようと何ら変わることがないものです。
トレーダーはどのような状態を狙って利益を上げているのか?
勝率も異常なほど高い。リスクリワードレシオもすこぶる良好。そんな手法やロジックを考え出したとしたならいかがでしょうか? その方法が、これから先にもずっと良い結果を出し続けられるでしょうか? 結論を言えば、そのままの状態では難しいでしょう。常に繰り返し改善する必要があるはずです。
なせなら、マーケットの歪みを狙いに行くのがトレーダーの仕事だからです。だからこそ、偏りがある状態が長続きしないのはそのためなのです。なので、ほどほどの勝率で、ほどほどのリスクリターンによる手法やロジック。むしろ、そういう方法のほうが扱いやすいのかもしれません。
その理由は、相場の中では目立たない分、その後の相場でも生き残れるやり方になる可能性が高いとも言えるからです。
為替相場を動かす不変の法則
奇をてらったようなやり方を模索する必要はありません。むしろ、オーソドックスにシンプルな考え方で日々のトレードに向き合ったほうが良いでしょう。その理由は、相場は人の感情により動かされているからです。つまり、100%の絶対法則は存在しない。どれだけ優れたAI(人工知能)を導入しようが、その実現は不可能に近いことです。
もし、AI(人工知能)に感情が備わるなら? それはもはや機械ではなく生物になれます。そうなれば人間さえ作り出せることになってしまうのです。でも、そんな世の中は訪れないでしょう。人間が人間である理由は感情があるからです。そして、この感情が為替相場の値動きを生み出しているのです。
そのことはどうか忘れないようにしてください。
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