恐怖指数VIX上昇には要注意です。
なぜなら、金融市場に対する恐怖心が高まっている状態だからです。
恐怖が増せば、パニックに陥る相場参加者が増えます。
そのことで、多くの相場参加者たちがパニック売りなどの行動を起こす。そうなれば当然にして、金融市場は急落や暴落に見舞われるからです。
なので、金融商品に関わるすべての人は、恐怖指数VIX上昇には要注意です。
VIXとは、別名「恐怖指数」と呼ばれているボラティリティ・インデックスのことです。これは、アメリカの代表的な株価指数であるS&P500を基にして算出されています。
相場の値動きには、価格が大きく動く時もあれば、あまり動かない時もあります。この変動の大小を示すものがボラティリティです。価格変動が大きければ、ボラティリティが高いとか大きいと言われます。価格変動が小さければ、ボラティリティが低いとか小さいと言われます。
そして、このボラティリティは過去の値動きから計算されるのが一般的です。そのようなボラティリティは、HV(ヒストリカル・ボラティリティ)と言います。
FXのインジケーターでボラティリティを表示させるときは、このHV(ヒストリカル・ボラティリティ)が表示されます。
恐怖指数と呼ばれるVIXの算出に用いられるのは、HV(ヒストリカル・ボラティリティ)ではありません。一般的ではないIV(インプライド・ボラティリティ)が用いられて計算されています。
HV(ヒストリカル・ボラティリティ)は過去のボラティリティによるものです。でも、IV(インプライド・ボラティリティ)は、予測に基づいた算出方法が用いられています。そして、その予測の対象に使われている市場が、アメリカの代表的な株価指数であるS&P500なのです。
なので、恐怖指数VIXとは、S&P500のIV(インプライド・ボラティリティ)を示したものでもあるのです。
その理由は簡単です。なぜなら、金融市場のすべては密接に絡み合っているからです。
たとえば、株式市場が下がれば、金(ゴールド)は上がりやすい。株式市場が上がれば、ドルインデックスも上がりやすい。円が強くなれば、日経株価指数は下がりやすい。もちろん、それらは100%確実な相関関係ではありません。でも、そんなふうに金融市場には相関関係があるからです。
では、なぜS&P500なのか? それは、世界の覇権国であるアメリカの代表的な株価市場だからです。S&P500は、アメリカを代表する500社を対象にしたものです。ですから、アメリカの経済状況をもろに示すものでもあるからです。
この恐怖指数VIXは、一般的に20未満であれば正常な状態だと言われています。そして、投資家が先行きに対して不安を感じていると、このVIX指数は数値が高くなる傾向にあります。ですから、まさに「恐怖指数」なのです。
通常は10~20の間で動いているのですが、恐怖指数VIXが30を超えると警戒領域だとみなされています。
以下のチャートは、2000年からの月足恐怖指数VIXを示したものです。警戒領域の境目30に太い緑色のラインを引きました。そのラインを上に超えている回数は、それほど多くないことが分かるのではないでしょうか?
30を超えたら警戒領域だと言われる恐怖指数VIX。この恐怖指数が「80」という領域を超えてきたことは、相場歴30年を超える中で2回だけ経験しました。これはまさに異常値です。
最初に恐怖指数の80超えを経験したのは、2008年のリーマンショックに端を発した世界同時不況の時でした。しかも、その時の恐怖指数が示した数値は、過去には前例のない極めて異常な数値だったのです。恐怖指数は、なんと「96.4」という数値を記録したのです。
ちなみに、2001年の同時多発テロ時の指数は43.7。2011年の東日本大震災時の指数は31.3。2015年のチャイナショック(中国株大暴落)時の指数は53.3。
なので、恐怖指数の「80」超えとは、いかに極めて異常な数値であるのか? そのことが分かるのではないでしょうか?
そして、2回目は記憶に新しいコロナパンデミックの時でした。「85.7」まで恐怖指数VIXは上昇したのです。それだけ新型コロナウィルスの影響による先行き不安感が市場に高まったという証拠を残しました。
先行き不透明感が漂えば、恐怖指数VIXは上昇します。その理由は、不況により経済が低迷する。そのことで金融市場からお金が消える。つまり、暴落によるパニック売りが激しくなる可能性があるからです。そのことを歴史が証明しています。
チャートに恐怖指数VIXを表示させる。そして、警戒領域まで指数が上昇した過去に、何が起きていたのか? そのことを確認すれば一目瞭然です。
ですが、それ以上に大切なことは、「我々がどうやって相場からの利益に結び付けるのか?」ということです。下がり続ける相場もなければ、上がり続ける相場もない。その真実を忘れないようにしなければ、きっとうまく対処していけることでしょう。