これは本当の話です。
60万円の元資金から投資を始めて、その60万円を15億円まで増やした投資家がいました。単純に計算すれば、元資金を2,500倍にまで増やしたというとんでもない実績です。
いま新NISAで多くの人たちが、S&P500やオルカンで積み立て投資をしていますが、30年積み立てを続けて、元資金が10倍にでもなれば万々歳でしょう。
ちなみに、S&P500とはアメリカの代表的な株価指数で、オルカンとは世界各国の株式を対象にした投資信託のことです。
また、世界的に金本位制が廃止されてから50年間を掛けて、金(ゴールド)の価値も貨幣に対して上がり続けてきましたが、それでも約60倍の上昇率です。
なので、「2,500倍がどれだけすごい実績なのか?」は、なんとなくでもイメージしてもらえるのではないでしょうか? そのとんでもない実績を上げた人物の名前は、エド・スィコータと言います。
当初、エド・スィコータという名前は、業界内ではそれほど名の知れた存在ではありませんでした。
でも、名著「マーケットの魔術師」の著者であるジャック・D・シュワッガーが、執筆に向けて著名なトレーダーへのインタビューを繰り返していたときに、インタビューした著名なトレーダーたちから何度もエド・スィコータという人物の名前を耳にすることになったのです。
まさに著名なトレーダーたちは揃ってエド・スィコータの実力を知っていたということですね。エド・スィコータは、約60万円の顧客口座を、なんと15億円にまで増やしたのです。しかも、それを成し遂げた期間は16年間でです。
そして、さらにすごいのは、顧客口座はいつでも出金自由だったことです。通常であれば、預けたお金は出金せずに、だんだんと雪だるま式に増やしていきます。でも、エド・スィコータは違いました。顧客は途中での出金が、いつでも自由に行えたのです。
なので、途中で出金された分を考えたら、更にもっと多くの利益を上げていたということになります。それほどの実力者だったので、著名なトレーダーたちが知らないはずはありませんでした。
そのようなとんでもない実力の持ち主だったので、ジャック・D・シュワッガーはエド・スィコータにインタビューの申込みをしたのです。そして、そのインタビューの記録が、名著「マーケットの魔術師」にも掲載されることになりました。
その本の中で、ジャック・D・シュワッガーの質問に対して、エド・スィコータが回答した内容が以下のものでした。
Q.どういうトレード・ルールに従っていますか?
A.(a)損切りは早く、
(b)利食いはじっくり、
(c)ポジションは小さく、
(d)躊躇なくルールに従う、
(e)ルールを変えるべき時を知る。
エド・スィコータがインタビューで答えた自身のトレードルールは、あまりにも普通というか、あたりまえというか、初めて聞くようなトレードルールでも何でもありませんでした。
要約すれば、「ポジションサイズを抑えながら損小利大のトレードを心掛けて、迷うことなくルールに従ったトレードを繰り返すこと」 何も特別なことはなく、あなたが今までにも何回も耳にしてきたことと同じことを述べていたのです。
「ルールを変えるべき時を知る」というのは、上手くいかないトレードルールはすぐに捨てて、コロコロといろんなトレードルールに切り替えろということではありません。ならば、それがどういう意味で何を示した言葉なのかを説明します。
すべての値動きに対応して利益を上げられるような都合の良いトレード手法などありません。たとえば、トレンド相場に強い手法ならレンジ相場に弱いとか、レンジ相場に強い手法ならトレンド相場に弱いとか、そういうことが往々にしてあります。
なので、ルールを変えるべき時を知るとは、いまがどのような相場環境なのかを判断して、どのルールを当てはめて仕掛けるべきかの切替時を知る、ということを意味しているのです。
もう少し詳しく説明すると、勝てないトレーダーの大半は、ひとつのトレード手法が万能薬のように、すべての相場に当てはまると思いがちです。
でも、ひとつのトレード手法だけで、すべての値動きに対応できるような都合の良いトレード手法なんて存在しないのです。ひとつのトレード手法だけでは、すべての値動きから利益を上げることはできないのです。
その時がどのような相場なのかを知ることができれば、無駄なトレードを避けて損失を避けることが可能になります。つまり、トレードで勝ち続けるためには、勝てる手法は当然にして必要不可欠ですが、それだけで満足してはいけない。さらに相場について学びながら経験を積む必要があるということです。
結局、60万円を2,500倍の15億円まで増やした投資家でさえ、勝つために重要な本質を愚直に再現し続けたことによって、大きな成果を上げてきたのだということです。
なので、我々がどう相場に挑んでいけば良いのかという答えが、ジャック・D・シュワッガーとエド・スィコータのインタビューから見出せるのです。