負けたくない! 一円たりとも損したくない!
特にFXを始めたての頃は、ほぼ全員の人がそんなことを考えるのでしょう。
僕自身も1991年(平成3年)に投資を始めた頃は、一円たりとも損したくないと強く思っていて、損失というものにとても敏感だったことを覚えています。
含み損を抱えていれば気が気ではなくて、落ち着かない時間を過ごしたことを思い出します。
ですが、今では損に対する考え方が大きく変化しました。名著「マーケットの魔術師」の中でポール・チューダー・ジョーンズが述べていた言葉に、僕は激しく共感します。
もし損の出ているポジションを持っていて不快なら答えは簡単だ。手仕舞うだけだ。いつでも相場に戻ってこれるのだから。新鮮な気持ちでスタートを切るのに優るものはない。(ポール・チューダー・ジョーンズ)
FXで損をしたくないと思うのは当然のことです。なぜなら、相場参加者の全員が、お金を減らすためにトレードしているわけではないからです。だから、損したくないという怖れはあたりまえの感情です。でも、FXで一円たりとも損をしないということは、現実的な事ではありません。
僕自身が相場で経験を重ねてきて徐々に分かってきたことは、お金を増やしたいのであれば、損失を受け入れなければならないということでした。
一円の含み損さえ避ける方法は知りませんが、確定損失を避ける方法ならあります。それは、絶対に口座が破綻しないような大量の資金を入れて、低レバレッジで取引することです。
そのような状態で、どれだけ含み損が出ても損切りしなくてポジションを持ち続ければ良いのです。でも、残念ながら、その方法では確定損失を避けることはできますが、お金を効率よく増やしていくことができないのです。
一円たりとも損したくなくて、損を避けようとすることが目的になると、結局はお金を増やすことができなくなるのです。なので、もし一円たりとも損したくなければ、最初からFXなんてやらなければ良いのです。
FXをやらなければ、損することも得することもありません。ですが、どうしてもFXでお金を増やすことに挑戦したいなら、ある程度の損失は許容するしかないのです。
文章にすればたったそれだけのことですが、特にFXの経験が浅い人なら、そのことを自身の心が受け入れてくれるまで、相当な時間が掛かるのかもしれません。でも、あなたが本気になってFXでお金を稼いでいきたいなら、頭も心もその事実を受け入れるしかないのです。
潔く損失を受け入れるということで、含み損のポジションを抱え続けるような塩漬け状態を避けることができます。塩漬け状態は最悪です。
・損失が大きくなりすぎて損切りする決断ができなくなり、ポジションを切るに切れなくなる
・毎日、含み損の膨らむポジションを見て 胃がキリキリするばかりか、生きた心地がしない
・運用資金が含み損のポジションに常に拘束されてしまい、新たなポジションの仕掛けができない
つまり、お金を増やすためではなく、損を避けるためだけの取引になってしまうのです。そんな状態は、絶対に避けなければなりません。そのためには、決めた値位置まできたら、潔く撤退しようという値位置を最初から決めておき、そこで確実に損を切るという行為が必要になります。
そのような損切りができるかどうかで、あなたのトレード収益には雲泥の差が生じるのです。
損失を確定させたくないために含み損のポジションを持ち続けるようなことを、あなたは過去に経験したことがあるかもしれません。損失が出ているポジションでも、いずれ値は戻ってくるだろうと高をくくってポジションを持ち続けたことで、結果的に大きな損失になってしまった経験があるかもしれません。
でも、もしあなたがそのような経験が一度でもあるなら、むしろ、それは幸運だったかもしれません。なぜなら、大きな失敗を経験していなければ、いずれ大きな失敗をする日が訪れるかもしれないからです。
僕自身も過去に大きな失敗をしてきましたが、その都度、そのことが大きな教訓として生きてきました。人生晩年になって大失敗を経験するよりかは、人生の早い段階で大失敗を経験したほうが、その後に立ち直れる時間的余裕が残されているものです。
大きなほころびというものは、常に小さなほころびから始まり、その小さなほころびが徐々に広がっていくのです。なので、「こんなことは起こらないだろう」と高をくくるのではなく、常に最悪のケースを想定しながら、小さなほころびで事が済むような心構えと姿勢が、いつ何時にも必要になるでしょう。
ですから、FXでお金を増やしていくためには、慎重すぎるくらい慎重に取り組まれることを、僕は心から強くお勧めします。