投資家であるなら1929年と聞けば、真っ先に頭に思い浮かぶのが世界大恐慌でしょう。
もちろん、僕自身はその時代に生きていた人間ではありませんが、今までに何度も世界大恐慌の恐怖を本などで読んできました。
巨大なバブルが崩壊して世界は大恐慌に突入したわけですが、その頃にリチャード・D・ワイコフによって書かれた本で、「スイング売買の心得」という書籍があります。
出版された時期が時期だけに、トレードのリスクに関する記述が多いのが、この本の特長だとも言えますね。その本の中から、あたりまえのことなのですが、多くの相場参加者たちが実践できていない一文を紹介して、リスクについて考察してみましょう。
見込まれる利益がリスクの数倍はなければ、投機的取引を行うべきではない。そして取引のときにはリスクを限定すること。(リチャード・D・ワイコフ)
ベテラントレーダーであれば、この言葉は当たり前のように常日頃から意識はしているはずです。でも、まだ初心者に近い人や継続的に勝つことができない負け組には、実現できていないことを示した一文でもありますね。
この一文は簡単に言えば、損小利大のトレードしか行うべきではないことを述べているのです。そして、損小利大のトレードを実現するためにはリスクを必ず限定させる必要があることを唱えています。
もしかしたら、「そんなこと言われなくても分かってるよ!」と思うかもしれません。「あたりまえのことを言うな!」なんて思うかもしれません。でも実際のところ、あなた自身はちゃんと損を限定できているのでしょうか?
リスクをどれだけ許容するのかを、あらかじめ限定して決めておかなければ、利益がリスクの何倍になるのかも見込めないことになってしまいます。初心者に近い人や勝てていない人は、リスクリワードに目を向けることもなく、ただ損失を回避することだけを考えてしまう傾向にあります。
損失を受け入れたくない、認めたくないために「損切りをしない」というか「損切りを避けよう」としてしまうのです。損切りのためのストップ注文を、まったく置かない人もいますし、ストップ注文を入れても値が近付いてくるとその注文を遠ざけてしまう人さえいます。
最初は意気揚々と利益を上げることばかりを考えているのですが、トレードしているうちに状況が悪くなると、損失を回避することばかりを考えるようになってしまうのです。
勝ち組は自分の意に反する値動きであれば、サッと損切りをして僅かな損失を確定させますが、負け組は自分の意に反する値動きであれば、無意識のうちに利益を得ることを忘れてしまい、長い時間を掛けても損失を回避しようとします。
なんとか損切りを避けようとして、そのせいで損を切るタイミングを逃してしまうのです。まさに、株式投資でよく言われる「塩漬け」という状態に陥ってしまうのです。
負け組は時間が掛かっても損失が回避できれば、「ああ良かった」と胸をなでおろします。でも、その間にひたすら勝ち組トレーダーは、自分の意に反する値動きであればサッと損切りをして、僅かな損失を確定させるのです。
そして、利益が得られる時にはそのリスクの何倍も利益を上げるトレードを繰り返しているのです。それが相場に参加する者たちの実態なのです。まさに以上のように、負け組のトレーディングとは、ただ損失を回避しようとするだけのものだとも言えるのです。
もしあなたが日々のトレードで、損失を避けることに喜びを感じてしまうのであれば、根本的に己自身のトレードのやり方を考え直さなければいけないのかもしれません。なぜなら、そのことに気付いて方向転換できた者だけが、勝者に近付けるということになるからです。
なので、もし今まであなたがトレードで、思うような実績とは掛け離れていた結果しか出せなかったのなら、それは間違ったことをしていたからだと気が付いてください。それ以外の理由なんてありますか?
もしあなたが負け組から抜け出したいということであれば、小さな損切りを徹底する方針への転換に今すぐに舵を切り直してみることをお勧めします。今までと同じことを続けて、結果だけが変わるということはあり得ません。結果を変えるためには、今までとは違うことをするしかないのです。