「やれやれ決済」ってどう思いますか?
エントリーして保有していたポジションで含み損の状態がずっと続いていて、ようやくエントリーした値位置付近まで値が戻ってきたからトントンで決済する。
それが「やれやれ決済」と呼ばれるものです。「トントンで決済できたなら、損しなかったんだから良かったんじゃないの?」って、あなたは思いますか?
マーティ・シュワルツは、このやれやれ決済について、名著「マーケットの魔術師」の中で、次のように述べていました。
Q.なぜ多くのトレーダーは損をするのでしょう。
A.ミスを認めるよりも、損をする方を選ぶからだ。損したポジションを持っているトレーダーの極めつけの正当化は何だと思う。「トントンになったら手じまうよ」だ。
トントンで手じまうことがどれほど重要だというんだ。自尊心を満足させられるからだろう。(マーティ・シュワルツ)
インタビューをしたジャック・D・シュワッガーの「なぜ多くのトレーダーは損をするのか?」という問いに対して、マーティ・シュワルツはこれ以上ないくらいに、的を射た表現で簡潔に回答したのです。
マーティ・シュワルツは、トントンで決済することは重要ではないと言いました。それはただの自己満足だろうとも言っています。確かに、損したポジションを持つ相場参加者の極めつけの正当化とは、トントンで決済することだという言葉には、僕は大きな説得力を感じました。
トントンでやれやれ決済するという事は、己の間違った判断を認めて損を切れずに、なんとか損をしないようにしようとする行為です。ポジションを持つ時に証拠金が拘束されるFXにおいては、「その他のポジションを証拠金が足りなくなるから持てない」という機会損失をもたらす事にもなりかねません。
つまり、トントンで決済できることで自尊心を満足させることができるかもしれませんが、効率よく利益を追い求める行為とはかけ離れた行為だとも言えるのではないでしょうか?
この値位置に来たら決済をしようと、多くのトレーダーがポジションを閉じる値位置が相場には存在をしています。その値位置の最も多くは、損切りの値位置であり、その次に多いのが、ポジションの損益分岐点です。
ポジションの損益分岐点とは何か? それは、利益も損失もない値位置ということで、具体的にはエントリーした値位置のことです。すなわち、その値位置が得もしないし損もしないという収支トントンの値位置だという事です。
つまり、含み益が乗っている状態であれば、建値(エントリーした値位置)に損切りのためのストップ注文を動かすトレーダーが多いということです。そして、含み損を抱えているトレーダーは、建値(エントリーした値位置)にリミット注文を置くようにするトレーダーが多いということです。
すなわち、ほとんどのトレーダーは、ひとつひとつのポジションの損益に対して、過剰なまでにこだわっている人が多いということです。そのことで、多くのトレーダーがポジションを建てるような単純なブレイクポイントは売り買い両方の注文が重なることが多いのです。
なので、その値位置付近は相場の壁となって、値動きの進行を妨げることがよく起こるのです。つまりサポートやレジスタンスは相場の壁で、そういうところには相場参加者の注文が重なっていることが多いということです。だからこそ、相場の壁になるわけです。
すなわち、相場参加者のポジションが重なる部分には、値動きの進行を妨げる相場の壁ができやすいのです。そのことは、利益を上げるための大きなヒントになり得る理解につながります。なぜなら、過去に壁があった値位置では、ポジションが重なっていたということをチャートが示しているからです。
そして、そのような値位置が損益分岐点になりやすいという事は、そのような値位置でエントリーした人が多いという事です。つまり、エントリーした人が多いという事は、その後にその値位置付近でやれやれ決済が行われる可能性も高いという値位置でもあるわけです。
買いのポジションの決済は売りで、売りのポジションの決済は買い、つまり反対売買が一度のトレードでは必ず行われる訳で、損益分岐点付近では売買が頻繁に行われることが多いという事です。つまり、値動きの向きが変わる値位置ではポジションが積み重なっていることが多いという事です。
相場参加者の損益分岐点を意識するということは、他の相場参加者たちの注文がどの付近に溜まっているのかを考える上でも重要です。それは、この記事でお伝えしてきたように、損益分岐点付近で決済などのアクションを起こすトレーダーが多いからです。
エントリーしたポジションで含み損を抱えてしまった場合に、なかなか損切りを決断できないのであれば、注文が集中している他の相場参加者たちの損益分岐点を避けるという選択肢もありです。
つまり、重要な値位置を抜けたらすぐにエントリーするのではなく、重要な値位置を抜けたことを確認してからエントリーを狙うということです。初心者であれば、そのような冷静な判断は難しいかもしれませんが、習うより慣れろが重要なので、ぜひ多くの経験を積み重ねてみてください。